さて、高齢者の事故は増えているのでしょうか。
本記事では、高齢者の事故の課題や対策、免許更新時の高齢者講習や認知機能検査についてご説明します。
【全体的には交通事故は減少傾向にある】
全体の交通事故発生件数は、2004年の95万2,720件をピークに減少傾向のあります。2018年には43万601件となり、ピークの時と比較し半分ほどに減少しています。
交通事故死亡者数も、2018年は3,532人と減り続けています。負傷者数も減り続けており、「交通事故全体の減少傾向が続いている」といえます。
その理由は、道路交通環境の整備、交通安全思想の普及、自動車の安全性能の向上や救助・救急活動の充実など、さまざまな安全対策や技術の向上が挙げられています。
特に、近年は自動車の安全装備の普及が進んでおり、国も衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を有していることを認定、公表するなど、事故防止にかなり役立っているといえるでしょう。
【65歳以上の交通事故は増えていない】
意外に思われるかもしれませんが、65歳以上の高齢者の運転による交通事故は増えていません。
実際に、警察庁の「原付以上運転者の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移(平成30年)」を見ると、件数自体は16~19歳、20~29歳の若者層のほうが多く、「高齢者は危険」と一概にはいえません。
【75歳以上の高齢者事故は増加している】
もうひとつ、「75歳以上の高齢運転者は、免許人口あたりの死亡事故件数が多い」ことが統計から読み取れます。
車両単独での工作物衝突や、路外逸脱事故による死亡事故は75歳以上の運転者による事故としては確かに増えています。 事故の原因としては操作ミス、つまりブレーキとアクセルの踏み間違いやハンドル操作の誤りの割合が高いとされています。
このような事故を起こす要因として、高齢者の身体的機能と認知機能の低下が指摘されています。動体視力や複数の情報を処理する判断力の低下、そして対処の際の身体機能の低下により、とっさのとき、ハンドルやブレーキ操作に遅れや誤りが起こるという特性があるとされています。
【高齢者講習と認知症検査】
運転免許証の有効期間が満了する日(誕生日の1ヵ月後の日)における年齢が70歳から74歳までの高齢者には、更新期間が満了する日の6ヵ月前から更新期間満了日までの間に、「高齢者講習」を受講することが義務付けられています。 75歳以上となる人は、記憶力・判断力を判定する認知機能検査を行い、その検査結果に応じて一人ひとりに適した高齢者講習を受講します。 高齢者講習の流れは年齢層で分けられます。
70~74歳(2時間の講習)
DVD映像や指導員と対話する形で交通ルールや安全運転に関する知識を再確認する講習の受講
動体視力、夜間視力、視野を測定
ドライブレコーダーなどで運転状況を記録しながら車を運転し、必要に応じて記録された映像を確認しながら指導員から助言を受ける
上記講習を受講後、運転免許の更新が行われます。
【75歳以上】
第3分類「記憶力・判断力に心配ありません」の判定70~74歳と同様の高齢者講習(2時間)を受け、必要に応じて、ドライブレコーダーで記録された映像を確認しながら、指導員から助言を受けます。
第2分類「記憶力・判断力が少し低くなっています」の判定上記の講習に加え、ドライブレコーダーで記録された映像を確認しながら、運転に関する個人指導を受けたり、DVDなどで安全運転を学びます。 少し念入りな講習となり、時間も3時間の設定となります。その後、運転免許が更新されます。
第1分類「記憶力・判断力が低くなっています」の判定臨時適性検査または主治医の診断書の提出が必要になります。「認知症ではない」とされた人に対しては、第2分類と同じ講習を受講し、運転免許が更新されます。 「認知症である」と判定された人に対しては、免許の停止または取消しとなります。
【臨時高齢者講習】
また、運転免許証を持つ75歳以上の人が信号無視、通行禁止違反、一時不停止など、認知機能が低下した場合に起こしやすい交通違反を起こした場合、臨時認知機能検査を行い、結果によって臨時高齢者講習が行われます。
臨時認知機能検査の結果が第1分類「記憶力・判断力が低くなっています」臨時適性検査(専門医の診断)の受検、または医師の診断書の提出が必要となります。 診断結果が認知症と診断された場合は、運転免許の取消し、または停止になります。
直近の認知機能検査と比較して結果が悪化した場合臨時高齢者講習 ドライブレコーダーなどで運転状況を記録しながら運転し、指導員から助言を受け、また記録された映像を確認しながら、運転に関する個人指導を受けたり、DVDなどで安全運転を学びます。
【運転免許証の自主返納】
身体機能や認知機能の低下により、運転に不安を感じるようになった人が、運転免許を返上する動きも目立つようになりました。 65歳以上の高齢者を対象にした「運転免許証の自主返納」の制度があり、有効期限が残っている運転免許証を返納できます。返納は、管轄地域の警察署や運転試験場、運転免許センターで受け付けています。
【運転経歴証明書】
運転免許証を身分証明書として使っている人も多いため、運転免許証を自主的に返納し、同時に運転経歴証明書を希望する方に「運転経歴証明書」の交付を行っています。
これにより、銀行の本人確認書類など、運転免許証の持っていた身分証明の機能をそのまま引き継ぐことができます。
また、運転経歴証明書の提示でバスやタクシーなど公共交通機関や店舗での割引を受けられる特典もあり、お住まいの地域の情報をチェックするといいでしょう。
運転経歴証明書の申請は、以下の条件が整っていれば交付されます。
①運転免許証の有効期限内に自主返納(全部)を行う
②運転免許証を自主返納してから5年以内
③運転免許証取消・停止処分などの対象になっていない
④免許停止処分期間中でない
⑤初心運転者講習の対象になっていない
③~⑤については、運転免許の取消しや免許停止中のドライバーは運転経歴証明書の申請ができません。 また、運転経歴証明書の申請には、以下の書類などが必要です。
運転経歴証明書交付申請書(受付の警察署や機関に置かれている)
住民票または申請者の氏名、住所、生年月日を確認できる身分証明書(免許証の自主返納と同時に交付申請する場合は「免許証」)
印鑑
申請用写真
手数料
【運転免許の自主返納と自動車保険 家族間の等級引き継ぎも】
運転免許の自主返納後の自動車保険についても知っておきたいことがあります。 自主返納まで積み上げてきた等級を、同居の家族に譲ることができます。 たとえば若い世代が初めて自動車を保有し自動車保険に入るとき、6等級からのスタートになるので保険料がどうしても高くなります。 このような場合、自主返納した方の自動車保険の等級を家族間(同居であれば、家族、親戚などの血縁、内縁関係の配偶者や配偶者と同居の親族も対象です)に引き継ぐことが可能です。 いままで積み上げてきた「安全運転の資産」を引き継げるいい機会ですから、利用を検討されるとよいのではないでしょうか。
【まとめ】
・75歳以上の事故は「アクセルやブレーキの踏み間違い」「道路の逆走」等の事故が増えています。
・75歳以上になると「高齢者講習」と「認知機能検査」が行われる。結果にて分類化され「第1類」に分類されれば「主治医の診断書」が必要。認知症と判断されれば免許は取り消される。
・免許を自主返納されても「運転経歴証明書」の発行を希望でき、「身分証明書」として使用可能。
・自主返納によって積み上げてきた自動車保険の「等級」を同居家族であれば引き継ぐことが可能。
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