top of page
アートボード 111.png
アートボード 112.png

杖の種類と特徴|目的別に上手に選んで足腰への負担を軽減!



杖(ステッキ)は、足の不自由な方や筋力の衰えた高齢者に自分で歩く喜びや、行きたいところへ出かけられる楽しみを与えてくれる介護用品の一つです。


一昔前では、種類が少なく選択肢も限られていましたが、昨今は高齢化社会のなかで需要が伸びるとともに、販売される杖のバリエーションも増えてきました。今では、介護度の高さ・色・素材・デザイン・価格などに応じて、好みに合う杖を選べるようになっています。


そこで今回は、自分にぴったりの杖を選んで毎日の生活をより充実させたいと考えている方や、その家族のために、杖の基礎知識や正しい選び方についてご紹介します。


【目次】

1.杖の目的と役割 2.杖の種類と特徴 3.杖の上手な選び方 4.杖の正しい使い方 5.杖の利用に介護保険を適用できる「福祉用具貸与」とは?


杖の目的と役割

介護用品である杖(ステッキ)を使用すると、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。まずは、日常生活における杖の目的と役割など、基礎知識をお伝えします。


●歩行を安定させる 身体機能は加齢とともに低下していきます。特に足腰の筋力が衰えると、2本の足で歩くことが難しくなります。杖を使う目的は、そういった高齢者の第三の足という役割を担い、体を支えて歩行の安定を助けることです。体を支える面積が増えることで、歩行時にバランスを保ちやすくなります。体のふらつきを抑えて、リズミカルに歩けるようになるのがメリットです。

●足腰にかかる負担を減らす 杖を使って歩くのは、「足腰が痛くて歩けない」といった問題を抱える高齢者にも有効です。杖に体重をかけると、足腰で支えている体重が分散されます。足腰の負担が軽減され、痛みが和らぐことにつながるのも杖のメリットといえるでしょう。


●安心感をもたらす 歩行が困難になると、転倒によるケガを恐れて外出を控えがちです。しかし、杖で体を安定させていれば、安心して歩きやすくなります。このように1人で歩く機会が多くなると、「人の手を借りずに自分の足で歩いている」という自信につながり、外出の楽しみも増えるでしょう。

また、杖はバランスを崩した際の支えになるため、足のこわばりを軽減しやすいのもメリットです。こういった点から、杖には持っているだけでも安心につながる心理的効果が期待できます。


●杖の先にある障害物がわかりやすい 杖には長さがあり、自分の体より少し先について使うことで、足元の障害物に気づきやすくなります。転倒や衝突の防止につながるのがメリットです。特に、視力が落ちている高齢者や視覚障害のある人は、杖を活用すると手で触れないほど遠くにあるものが、わかりやすくなります。

杖の種類と特徴

最適な杖を選ぶためには、杖の種類と特徴を把握することが重要です。ここでは、介護の現場で使用される杖をピックアップし、それぞれの特徴や長所についてご紹介します。


●T字杖 ・杖の特徴 真っすぐな杖に握り手が付いている最もスタンダードなタイプです。折りたたみ式や伸縮式でないものは「一本杖」とも呼ばれます。誰でも扱いやすく、デザインの種類が豊富にあるのが特徴です。グリップの形状によっては、「T字型」「L字型」「オフセット型」のように、さらに細かく分類されることもあります。

T字杖はグリップ部分を握り、杖の先を地面について歩きます。特別な扱いは必要ないため、初めて使用する人もすぐに慣れることが可能です。シンプルな形状で比較的軽量のため、高齢者が持ってもそれほど負担になりません。

T字杖には、普段使いタイプのほかにも、持ち運びや収納に便利な折りたたみタイプ、伸縮性のあるタイプなどがあり、好きな色やデザインを選べます。お気に入りの1本を探してみましょう。

・T字杖に適している人 T字杖は、基本的に杖がなくても自力で歩ける状態の方におすすめします。T字杖はあくまでも歩行のサポート用であり、体重の約6分の1までしか補助できないためです。


●ロフストランド杖 ・杖の特徴 上部に前腕を通す「輪(カフ)」があり、下部に「握り手(グリップ)」がついた杖です。「ロフストランドクラッチ」と呼ばれることもあります。

ロフストランド杖の特徴は、サポート力の高さや高い安定感などです。カフとグリップの2カ所で体重を補助するため、T字杖と比べて多くの体重を分散しやすいという特徴があります。握力が弱っている高齢者の歩行も安定しやすいでしょう。

また、「カフ」の形状には前腕をはめやすいU字タイプと、しっかり固定できるO字タイプがあり、身体レベルに応じて適したものを選べます。

・ロフストランド杖に適している人 ロフストランド杖は、握力が弱っている方や体に麻痺がある人に向いています。手が変形している場合や、下半身に体重をかけることはできても筋力が足りずに支えきれない場合のように、T字杖を上手に使えないときにロフストランド杖を選びましょう。


●松葉杖 ・杖の特徴 松葉杖は、脇当てとグリップが付いているタイプの杖です。一般的には骨折したときに使うイメージが強いかもしれませんが、歩行の際に使うと、体の左右バランスを補正できるというメリットがあります。特に2本1組で使用する場合は、上半身だけで体重の大半を支えることが可能です。T字杖やロフストランド杖と比べると、下半身にかかる負担を大幅に抑えられます。

また、松葉杖は意外にも素材の種類が豊富なのが特徴です。アルミ製の軽量タイプや、手に馴染みやすい木製のタイプのほか、伸縮性のあるタイプなどもあります。リハビリ時だけでなく、長期的な使用を考えている場合は、自分に合ったものをレンタル・購入すると良いでしょう。

・松葉杖に適している人 松葉杖は、骨折や捻挫をしている人をはじめ、下半身に麻痺や股関節症などがあり、下半身をサポートしたい人に有効です。ただし、松葉杖を使用するにはある程度の幅が必要となります。自宅で十分なスペースを確保できない場合は、住環境を見直してみましょう。


●多脚杖 ・杖の特徴 多脚杖とは、地面と接する杖先が1点である「T字杖」に対して、杖先が3点あるいは4点の杖のことです。別名は「多点杖」で、杖先が3点のものは「3点杖」、4点のものは「4点杖」と分けて呼ぶことがあります。支えるポイント(支柱)が多く、安定性が高いのが特徴です。

多脚杖は、病院や介護施設のように段差のない平らな場所では非常に便利ですが、段差のある屋外では不安定になりやすく、かえって転倒するおそれもあります。購入する際は、使用する場所や環境を考慮しましょう。

・多脚杖に適している人 多脚杖は、T字杖では足元が安定しない方や、脚力が低下している方におすすめです。杖先が3~4点で安定しているため、姿勢が悪い人方や、背骨が曲がった人方にも適しています。また、利用シーンとしては自宅内や施設・病院内での移動がメインの場合に向いているでしょう。


●肘支持型杖 ・杖の特徴 肘支持型杖は、杖の上部に肘を固定する横木があり、肘全体で体重を支えるタイプの杖です。肘を乗せる部分には弾力性のある素材が使用され、肘を乗せた状態で先端にあるグリップを握って使います。高さやグリップの位置は、細かく調整が可能です。「リウマチ杖」と呼ばれることもあります。

・肘支持型杖に適している人 肘支持型杖は、手首や肘を自由に伸ばせない方にもお使いいただけます。たとえば、リウマチや関節炎の場合などです。ほかにも、握力が非常に弱い方や、腕に障害がある方が肘支持型杖を使うこともよくあります。



杖の上手な選び方


自分に合う杖は、どのように選べば良いのでしょうか。ここでは、それぞれの種類と特徴を踏まえたうえで、長さ・グリップ・素材などのポイントから、自分に合う杖の選び方をお伝えします。


●適切な長さのものを選ぶ 体にフィットした杖を選ぶポイントは「長さ」です。快適に歩くためには、自分の身長に合った最適な長さの杖を選ぶのが重要といえます。最適な長さの目安は、「身長÷2+3」という計算式で導き出せます。

(例)身長170センチメートルの方の場合 170÷2+3センチメートル=理想的な杖の長さは88センチメートル

ただし、上記数値はあくまでも目安です。実際に購入する際は、計算式だけで決めずに、利用者本人が実際に手に取って使いやすいものをお選びください。


●握りやすいグリップを選ぶ 杖のグリップ部分は、利用者が最も握りやすい形状のものを選びましょう。フィットするグリップは、手の大きさ・デザインの好み・握力などによって異なります。一度、実物の杖を握ってみたうえで検討すると良いでしょう。


●素材と太さにこだわる 日常的に杖を使用するなら、「軽さ」と「丈夫さ」が使いやすさのカギとなります。杖は一般的に棒部分(シャフト)が太いほうが丈夫ですが、一方で太さの分だけ重くなります。購入前は実際に自分でついてみて、重さと安定感のバランスが一番良いと思うものを選びましょう。


●歩行能力に合ったものを選ぶ 杖は利用者の歩行バランスや握力の強さなど、体の状況に合わせて選びます。たとえば、歩くときバランスが取りにくい方には、安定感のある多脚杖がおすすめです。一方で、握力の弱い方には2カ所で体を支えられるロフストランド杖が適しています。ご自身の歩行能力に応じて検討しましょう。


杖の正しい使い方

せっかく自分に適した杖を選んでも、使い方が間違っていると上手く力が入らなかったり、転倒を誘発したりする可能性があります。杖の正しい使い方を理解しておきましょう。


●T字杖 ・正しい持ち方(握り方) 麻痺などがない足側の手を持ち手にしてください。グリップは人指し指と中指で挟むように握ります。

・歩き方 T字杖を使う場合、「3点歩行」が一番安全とされています。正しい3点歩行をするには、以下の動作を繰り返します。

1.杖を出す

2.動かしにくいほうの足(杖と反対側の足)を出す

3.杖を持っているほうの足(もう片方の足)を出す

4.「1」に戻り、流れを繰り返しましょう。


●ロフストランド杖 ・正しい持ち方(握り方) 基本的にはT字杖と同様に、人指し指と中指で挟むように握ります。ただし、ロフストランド杖にはグリップ上部に前腕を通すカフがあります。カフとグリップの位置が近すぎると手首に負担がかかりやすくなるため、自分に合った長さに調節してから使用しましょう。

・歩き方 基本的にT字杖と同じ「3点歩行」が最も危険が少ない歩き方とされています。


●松葉杖 ・正しい持ち方(握り方) 杖先は、足の前と外側から15センチメートルほど離したところに置きましょう。脇下には指2~3本分の隙間を空け、肘の関節を軽く曲げてグリップを握ります。

・歩き方 T字杖と同様に、まずは松葉杖の杖先を前方に出します。次に、脇当て部分を腕と上半身で挟み、グリップ部分に体重をかけます。松葉杖に体重をかけたら、麻痺などがないほうの足を前に出して進みます。


●多脚杖 ・正しい持ち方(握り方) グリップの握り方はT字杖と同様です。肘を30~40度曲げた状態の位置にグリップがくる長さのものを選びましょう。

・歩き方 T字杖と同様に、「3点歩行」が最も安全とされています。


●肘支持型杖 ・正しい持ち方(握り方) グリップをしっかりと握り、前腕部を横木に載せたらバンドで固定します。前腕部は、横木の中央に載せるのがポイントです。

・歩き方 T字杖と同じく、「3点歩行」が良いとされています。2本同時に使用することもあります。


杖の利用に介護保険を適用できる「福祉用具貸与」とは?

杖をレンタルするなら、「福祉用具貸与」で介護保険を利用すると、自己負担する費用を抑えられる可能性があります。ここでは、福祉用具貸与を利用する方法や、注意点をご紹介します。


●福祉用具貸与の基礎知識 「福祉用具貸与」とは、福祉用具のレンタルで介護保険を適用できる、介護保険法に基づく介護サービスのことです。歩行補助用の杖を含み、13種目が福祉用具貸与の対象となります。

介護保険が適用されると、レンタル費用は原則1割負担で済みます。ただし、所得に応じて負担割合が増えることがあるため、ご自身の状況をご確認ください。介護度が高くなると、杖のほかにも福祉用具貸与でレンタルできる用具の種類が増えます。


●福祉用具貸与を受けるには? 福祉用具貸与を受けるには、福祉用具貸与事業者と契約を結ぶ必要があります。そのためにも、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談のうえ、ケアプランを作成してもらいましょう。福祉用具を選ぶときは、福祉用具貸与事業者に所属する「福祉用具専門相談員」からサポートを受けられるため、ご安心ください。


●福祉用具貸与の注意点 福祉用具貸与では、利用できる杖の種類に制限があります。なかでも、T字杖は介護保険の対象外です。また、杖を自分で購入するケースでは介護保険を適用できず、全額自己負担となります。購入する場合も、福祉用具の専門知識を持つスタッフにご相談のうえで、適切な杖を選びましょう。

お住まいの自治体によっては、高齢で足腰の弱った方を対象に、無償で杖を支給していることがあります。福祉用具貸与と合わせて、自治体による支援も確認してみましょう。

閲覧数:17回

最新記事

すべて表示

移転

コメント


bottom of page